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恥ずかしがりやな君へ5のお題

(2512のちっちゃいネタ詰め)
(お題をお借りしました)




・そういうところも可愛いけれど

「遅くなる、とは言っておいたよ」

こちらに背を向けて、ふとんにくるまって、きっと唇をつんと尖らせてふて寝の態勢。
ひとりが嫌いな子だと分かってはいても、そうそう早くは帰れないし、代わりに誰かをやるのも嫌だ。この子におかえりなさいと言われるのは、僕一人でなければ嫌だ。
今日だって待っていたのだろう。帰りを待ち望むくせに、なんか慣れない、と照れくさそうに玄関扉を開けた僕におかえりと言う。
それを聞かない限りは、どうしたって頭が切り替えられない。いつの間にかそうなってしまった。

「ねえ、あなた、そういうところも可愛いけれど」

ずいぶん遅くなったけれど、ただいまと言うのはあなたにだけなのだから。
おかえり、そのほんの四文字の魔法を、僕にかけてはくれないかな。

「…ずるいぞ、きょーや。……おかえり」

ああ良かった、これで今日もよく眠れそうだ。



・…あんまり見んなよ

恭弥は、オレを見るのが好きらしい。
くせだらけの髪に触れ、すこし耳をなぞり、あごの輪郭を辿る指先に捕らえられる。
そうして、まっ黒な恭弥のひとみは、オレのひとみをじぃっと射抜く。
恭弥のひとみは、黒々と艶めいていて、いつも何だかむずむずとした気分にさせられる。

「…あ、あんま見んなよっ」

耐えられなくってそう言ったのに、

「だって、あなたのひとみが綺麗だから」

ふわりと笑う恭弥に、やっぱり今日も勝てなかった。



・色付いた桃色の頬

イタリアの子だというのに、この子はあいさつのキスを未だに恥ずかしがる。
頬に軽く触れた唇は、この子が背伸びをしたぶんだけ遠ざかり、ひどく名残惜しい。
あいさつのキスを返そうとすこし屈み込むと、びくっと身をかたくするのは、緊張と照れのあかし。
白い肌のうえに朱が乗って、まだ幼さを残すふっくらとした頬は、ほんとうに桃のようなかぐわしさで。
ついつい齧りついてみたら、うひゃあ、と色気のない悲鳴が聞こえた。
おいしそうだとは思うけれど。今はまだ摘み食いだけにするべきなのかな。



・ねぇ、こっちをむいて

体じゅうを傷だらけにするのは、もう日課のようなものだった。
なんにもないところで転ぶし、転んだ先には片付け忘れたスプーンがあるし(フォークとかナイフじゃなくてよかった)、転んだ拍子に近くの棚をすっ倒したし(棚は恭弥が止めてくれた。中身があんまりない棚でよかった)。
腕に足に顔に、べたべたと絆創膏を貼る、それももう慣れたもので、特に顔なんかは鏡を見なくても貼れるようになった。
絆創膏だらけの顔が、みっともなくて、情けなくって、恥ずかしくって見れないという理由もある。
だけど恭弥は、そんなのお構いなしにオレのことをじっと見る。顔をみせてよ、の言葉にぷいっと横を向いたオレの頬を、ひとさし指でつんとつついて、

「ねえ、こっちをむいて、僕の可愛いディーノ」

その一言で、オレはいつだって陥落するのだ。



・精一杯に差し出された、震える手

初対面では会話もなかった。
二回目に会った時ようやく氏素性を覚えた。初対面でそういえば誰だかが紹介していた気がするけれど、その時はかけらも興味がなかった。
三回目と四回目は、ひとことふたこと、当たり障りない話をした。今日は天気がいいな。明日はどうか知らないけれどね。返答ともつかない言葉を、綺麗な金髪の子どもは笑顔で受け取った。
五回目を迎えた時、すこし鍛えてやってくれねーかとあの赤ん坊が言った。ええ、と驚いた声をあげた子どもの、それでも何かを期待しているようなはちみつ色のひとみが印象的だった。
六回目は、もうこの家だ。棲み処のひとつに多少の家具を買い足して、暮らすに困らない程度の家にした。先に家に入っていた子に、ぎこちない様子でおかえりなさいと言われ、しばらく何も言えなかったのを覚えている。
七回目、おかえりなさいの次に、はじめて名前を呼ばれて、心のどこかがぞわりとした。嫌悪感はなかった。ない事が不思議だった。嫌っていたはずの他人との関わりを、断ち切ろうと思えないのが不思議だった。
八回目、ただいまと返してみたら、やけに嬉しそうに笑うので、ふとその髪を撫でてみたくなった。ふわふわの金髪に埋めた指を、そろりそろりと確かめるように子どもの手が伸ばされる。こぼれ落ちそうなほど見開いたはちみつ色のひとみが、何故かと問うようにこちらを見ていた。

九回目。

「お、おかえり…なさい、恭弥」

背伸びをして、頬に唇をかすめた子どもの、まだ震える指先を感じながら。

どうしようもない独占欲と、焦げ付きそうに膨れ上がる劣情とを、抑えきれる自信はなかった。





―――
仔うまちゃんを愛でたい周期←
本当はもうちょっとEROく書きたかったなんていえない(書いてる)


title by [ リライト ]
[ http://lonelylion.nobody.jp/ ]


ナイトメイカー

(25と12)




「チェック」
「……」

コツン、と軽い音で終えられたゲームは、その前もその前の前も、何回やっても似たような盤面で勝敗がついていた。
何敗目だっけなあ、逃げ場のないキングを指先ではじいて倒す。哀れにも転がったキングは何だか寂しそうだった。

「戦略がなっていないんだよ。ポーンを守るためにキングを進ませるなんて馬鹿げてる」
「…恭弥は、ほぼキング単騎突入してくるのに」
「勝算もなく進むな、ってことさ」

もう一ゲームやろうか、と恭弥は駒を並べ直していく。キングにメイトをかけられたキングを手渡されて、いちばん守りが堅いはずの幾重にも囲われた場所へ。
オレと恭弥が指すと、たいてい恭弥のキングによってチェックされる。キングが突っ込んでくるってどうなんだろう、と思うけれど、それで毎回負けてるんだから、問題はむしろオレにあるのかもしれない。

「捨て駒にしろと言ってるんじゃない。切り捨ててでも守らなければならないものを理解しろと言ってるんだよ」

ポーンを進ませながら恭弥が言った。

「盤上と現実は全く違うものだけれどね、それでも『歩兵』は『王』を守らなければならない。そのためのポーンであり、キングなのだから」

頭が落ちれば終わりだ。オレが進めたポーンを見つめ、またひとつ恭弥はポーンを進めた。
オレは、誰ひとり失いたくはなかった。

「駒の重要度は場合によって変わってくることもあるだろう。だとしても、守られるべきは『王』だ」

チェスで戦略を学べと言ったのはリボーンだった。…恭弥はショーギの方がいいと言っていたけど。
指先ひとつで駒が死んでいく。たったひとつの『王』を守るために。

「……恭弥も、キングを守るために何かを犠牲にしたりする?」
「守らなければならないほど弱いならね。―――チェック」
「…………」

コツ、とまたキングが逃げ場を奪う。恭弥のキングは、ほとんど何にも守られることなく、はじめから一人であるように振る舞う。それはそのまま恭弥のことだ。
オレも強ければそうなれるんだろうか。キングを握りしめたまま黙り込んでいると、ふと恭弥がオレの頭をくしゃりと混ぜた。

「強くなれと言ってるわけじゃないよ。ただ守りたいものも守れないほど弱くあるな、ということ」
「……うん」
「ポーンを守るキングなんて馬鹿げているけれど」
「……だって、捨てられないもん」
「本当、馬鹿だと思うけれどね―――、そういうあなたが、僕は好きだよ」
「………………えっ」

ぽかんと口を開けたオレに、恭弥は「お守り」と自分のキングを渡してきた。

「あなたが一度も勝てなかったキングだもの、きっとあなたを守るよ」

手のひらの上で、白と黒のキングが転がる。恭弥のキング。オレのキング。
恭弥のキングは、恭弥のことだ。

「…恭弥」
「なに」
「いつか恭弥に勝てたら、オレのキングを恭弥にあげる」

恭弥のキングが恭弥のことなら、ポーンすら切り捨てられない馬鹿げたオレのキングは―――。

「…期待しないで待っているよ」

ふたつのキングを除いた駒をすっかり片付けてしまってから、恭弥は、苦笑めいた笑みをこぼした。
強くなりたいわけじゃない。ただ、守りたいものを守れるようになりたいだけだ。

「オレのキングも、きっと恭弥を守るから!」

守りたいものを守れる『王』に、なりたいだけだ。




―――
色々と語りたいネタなのですが長くなりそうなので少しだけ(´ω`)
12だからこそ愚直に全てを守ろうとしてしまう、それを馬鹿だと思うけれど同時にひどく愛おしくてたまらない、そんな25と12の実があるんだかないんだかなチェスゲーム。
馬鹿らしいほど真っ直ぐなひとを、どうしようもなく愛おしいと思う、そんなはなし。



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