2020/01

<< January 2020 | 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>


LATEST ENTRIES

 

CATEGORIES

 

ARCHIVES

 

LINKS

 

ADMIN

 

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

 

  • -
  • スポンサードリンク
  • -
  • -
  • pookmark


四年前のなれのはて


(中学生うまと大学生雲雀)

迎えに行ってあげようか、とついさっき電話が来た。人恋しさに思わず膝を抱え込み、みっともなく洟をすすりながら、果たして自分はイエスの返答を出来ただろうかと心細くなる冬の夜だ。
はあ、と息を吐いても白く濁るばかりの冷えた空気は、ちっとも体を温めてはくれない。
あなたはほんとうに泣き虫だね。そんな声が聞こえた気がした。
無関心なようでいて自分のことをきちんと分かってくれる、6つ歳の離れた幼なじみ。いつもぴんと背筋を伸ばしてすらりと立っているような、とても綺麗なひと。
どうしてだか、頼りたくなった時になにも言わなくてもすぐに来てくれる――似合わない言葉だけれど、ヒーローみたいな存在だった。

「きょーやぁ…」

震える声で名前を呼んでみても、応える声はない。
はやくきて。独りぼっちでいるとひたすらに寂しさが募って、余計に寒くなっていくようだった。
膝にひたいを寄せてまた呟く。俺の、誰よりも大好きな幼なじみ。

「……恭弥ぁ」

ふいに、じゃり、と砂を踏む音がした。

「情けない声」

髪をくしゃくしゃにかき回す、少し冷たい手。
それでもその手のひらは優しく、不安にささくれていた心をじんわりと溶かしてくれる。
マフラーを俺の首に巻きつけて、自分がしていたのか、まだ温もりの残る手袋をはめさせられる。
そうしてやっと顔を上げたそこに、口端だけをつり上げた見慣れた笑みを見つけて、俺は思わず飛びついてしまった。

「きょーやー!!」
「はいはい」
「かえる、家帰るぅぅぅ…!」
「そうだね」

随分冷えてしまっているから、早く帰ろうね。俺の背中をぽふぽふ叩きながら、いつもとあまり変わらない様子で恭弥が言う。
俺はやっぱりみっともなく洟をぐずぐずと鳴らすのだけれど、恭弥は気にしたふうもなく俺の背を撫でていた。



五年前のなれのはて


(25とオートマタ12)

プラスチック・ケースの中で微笑む金髪のビスクドールは、僕を見つめてひらひらと手を振った。
ケースの中にはその等身大人形と値札のようなものが入れてあるだけで、何もおかしなところはない。
……人形の少年が、依然ひらひらと手を振っていることを除けば。
ケースの脇には説明文が貼りつけられている。水、酸素、食物、その他一切の動力源が必要ない自動人形。
観賞用にするも良し、雑用係にするも良し、はたまた夜のお供にも。そんな謳い文句だった。
非人道的行為が行われている疑いがある、と査察を命じたドン・ボンゴレの超直感とやらは、相変わらず的中率が高い。

「(…潰すか)」

こういった自動人形は数年前に製造中止、販売差し止めになっている。事後承諾になってしまうが、不当に取り引きされているのならば廃棄しなければならない。
腕を振って仕込みの獲物を構えると、迷いなくプラスチック・ケースに叩きつけた。みし、と僅かに軋みを上げてケースが割れる。
人形の少年は、きょとんとその様子を眺めていた。髪の色と同じような蜜色の瞳がこちらを向く。
視線は腕、もとい武器のところで止まっている。警戒していると言うよりは、興味津々、といった表情だ。
珍しいものでもないと思うのだけれど。
少年は、やにわに瞳をきらめかせて視線を合わせてきた。

「なんにもないところから、それ出した!お兄さん、まほうつかいみたいだな!」

少年はそう言って笑った。やる気の失せる――正確に言えば、毒気を抜かれる笑顔だった。

「君」
「ん?」
「一緒に来るかい」

このままここにいても処分されるだけだ――とは言えなかったが、少年は何を気にする様子もなく、いく、と舌っ足らずに応えた。
連れ帰ってどうこうしたいわけではない。ただ少年の笑顔を見ていると、それを害そうとは思えなかっただけである。
つまりはまあ、絆されたのだ。




六年前のなれのはて



(25と12♀)

「――なので右辺はこのようになり」
「うー…」
「………。休憩にしようか、お嬢様」

応用の計算問題を解き続けて少し疲れたのだろう、眉をしかめたままの少女は『休憩』の言葉にようようペンを置いた。

「数学嫌いだ」
「基礎は問題ないようだから、相性が悪いんだろうね。―――失礼、悪いだけだと思います、お嬢様」
「それやめろよ、恭弥に敬語使われると、なんかむずむずする」
「そう?立場上は当然のことなんだけど。まあ…雇い主のご意向に添わせて頂きます」
「だからー…。あーもーっ。散歩行く!」

ついて来いと言外に含ませ、雇い主の少女が席を立つ。愛らしい顔立ちのくせにあまり少女然としないこの雇い主は、趣味嗜好もまた『お嬢様』のそれではなかった。
ひらひらとフリルの揺れるスカートを嫌い、家の中で大人しくしていることなど終ぞなく、年頃の少女のようには長くない髪で快活に笑う。
そういう少女らしからぬこの少女を、僕はとても気に入っていた。

「恭弥、はやく!」
「はいはい。――ああ、そうそう。勉強がひと息付いたら来てくれって、コック長が言っていたよ」
「コック長が?なんだろ」
「さあね。いいもの作って待ってる…とか言ってたかな」
「いいもの!?ドルチェ!?」
「さあ―――あ」

コック長の言葉をそっくり伝えると、少女は瞳をきらめかせて一目散に駈けていってしまった。走ると危ない、と言いかけたところで少女はこちらを振り向く。

「恭弥ってばー!はーやーくーっ」

ぴょこぴょこと飛び跳ねて、早く早く、と急かしている。
少女らしからぬ、というのを少し訂正しよう。
たかが甘いものに目をきらきらと輝かせる様は、それこそ少女らしく可愛いものだった。



Meaning [I Love You]

(時間軸としては数年後)



【恋愛なんて性に合わない】

そもそも。雲雀恭弥は思う。
そもそも何を以てしての愛なのか、と。
自分がそれを語れるほどに経験してきたつもりはないし、別に経験したいわけでもないのだが、ふと疑問に思ったのだ。
愛とはたとえば、あなたのためなら死んでもいいとさえ言えるほどに重苦しいものである。
しかしながらまた、語ることに意味などないと言うものもいる。
そうして、結論として行き着くのは、愛は理屈では語れない、ということだった。
ならば恋愛とは何か。雲雀はまた原点に立ち戻る。
理屈ではない、すなわち衝動。あるいは本能。動物的、即物的感情。
そうするともしやすれば、これは愛にあたるのだろうか。
意思とは(少なくとも雲雀の自意識下では)無関係に動いた手が、ふわふわとした金髪を捕らえている。
指先が、絡みつく癖毛を掻い潜り肌に触れる。額、こめかみ、そして耳の先。
指の辿ったそこに口付けてみたいと思ったのもまた、意思とは無関係に体が動いたのだと認識した後だった。
これでは到底、愛が何かなど語れない。
雲雀恭弥は、やはり自分には色恋沙汰は似合わないなと小さく舌を打った。



【逃れられないなら、いっそ】

自分のものと比べればまだ幼い指が、歳に似合わない艶を持って自らの髪を梳いていくのを、どこか夢見心地でディーノは眺めていた。
綺麗な指ではあると思った。しかし綺麗なだけの指ではないことも知っていた。
この指はどうして、自分の髪をすべるように辿っていくのだろうか。そしてそれを、不思議にこそ思えど、嫌がるでも鬱陶しがるでもなく許容している自分もまた、何故なのだろうか。
綺麗な指だった。少年を少し抜け出した、けれどまだ自分よりは小さいのだろう手。この手から逃げることなど、考えもつかなかった。
それがつまり何を意味しているのかを、まだディーノは認識していない。
色もそれ自体も薄めな唇が、そっと額に落とされるのを、やはりどこか夢を見ているような気分で受け入れる。
夢だったならどれほど。ディーノは現実を諦めた。
目を瞑り目を開き、そこに映るものが彼の顔だとしたならば、それはもはや恋人のそれだと思った。



【趣味が悪いね】

理由を持ち得るものがいない。どちらともなくそう思い、疑問符ばかりの空気の中でふとディーノが口を開いた。

「触りたいのか」

その言葉に、雲雀は僅かに瞠目した。未だ自分の行動と思考が相互理解をしてくれないでいるので、確かに触れている指先と何故触れているのだろうかという思考では、その言葉に対する返答を見つけられない。
だから雲雀は逆に、ディーノに問うことにした。それが『逃げ』であることには、気づかないふりをする。

「こうされていて、あなたは嫌じゃないの」

つ、と指先が耳のかたちをなぞっていく。それに少しだけ背筋を震わせて、ディーノは雲雀にまっすぐ視線を注ぐ。
この距離を受け入れてしまっている時点で、もう嫌悪感はなかった。年の離れた友人としての距離を保てなくなったのは、いつ頃からだったろうか。
何のかんのと考えたところで、ディーノには返せる言葉など一つしかなかったのだけれど。

「べつに―――嫌じゃねえよ」

雲雀はそれにもまた目を瞠ってみせた後、生まれて初めてそんなことをしました、とでも言うような不自然な笑みを口端に刻んで、指先をそっと唇にすべらせた。

「あなた、趣味が悪いね」

それはお互い様じゃないか、とディーノは言わずにおいた。言えなかったせいもある。
するり、ディーノの唇にからんだ指先は、少しの間をあけた後で雲雀の唇にとって変わった。
面倒な相手を好きになったなあ、ぼんやり思うディーノに、雲雀は奇妙な笑みを浮かべる。







さあ、ばかみたいに甘ったるい愛を語ろうか。


同居一週間

(成立直前ひばうま・お題をお借りしました)
(22と29くらい?)


この事態はどういうことだと雲雀恭弥は考える。

『報酬は出す、少しの間ボスを匿ってやってくれねーか』

その要求にイエスともノーとも返さないうちに、棲み家のひとつであるアパートに運び込まれる家財道具。着替えに十分すぎる量の食料品、恐らく彼のものであろうノートパソコン。
それらと共に少しだけ申し訳なさそうに眉を顰めた金髪の男が入ってくる。

『すまん…お世話になります』

世話をしてやると言った覚えは雲雀にはない。



同居一週間



・寝癖ついてる

リビングを占拠した男のベッドは、とりあえず買ったにしては不必要なほど大きい。
寝汚い彼は目覚ましを無視して寝続けている。いい加減やかましいので蹴り落とした。もちろんベッドの上でぐうぐう寝入ったままの男をだ。

「いってぇ!!」

ベッドの向こう側に落ちた男が喚いた。何すんだよと睨みつけてくるのを雲雀はさらりと流して、鳴り止まない目覚まし時計をぶん投げた。
リリン。叩きつけられて外れたベルが鳴る。男はさすがに黙って壊れた時計のパーツを拾い集めはじめた。
ベッドの影から、這うようにパーツを探しているからか時折ひょこひょこと黄色い頭がのぞく。
方々に撥ねた髪は寝癖かとも思ったが、考えてみれば男はわりといつもこんな髪をしていた。
寝癖なのか天然のくせ毛なのか、知らなくてもよかったことまでこの生活で知ってしまいそうだ。
その撥ね髪に触れてみたいと思った自分を、雲雀はそっと殺した。



・玉子特売忘れるなよ

『おー恭弥ぁー、さっきチラシ見てたらさ』
「勝手なことをするな」
『そのへんに置いとくのが悪いんだろ。でさ、なんか卵が安いらしい。買ってきて』
「断る」
『暇なんだよ』
「あなたが仮に暇だったとして、それと卵と何の関係があるの」
『おやつ作ろうかと』
「ますます買う理由がなくなった」

初日にキッチンの蛇口を壊した暴挙をもう忘れたらしい。



・もしもし

プロント、と男の声が聞こえた。
日中の居所として腰を据えたらしいソファの周りには、いつ運び込んだのか大量の書類が積み重ねられている。
いっそ蹴り飛ばしてやろうか、と思いながらも男の分までコーヒーを入れてやっている自分が分からない。
雲雀は、仕事の話だったのだろう通話を終えた男にコーヒーを差し出した。

「ああ、悪い、さんきゅ。…何で眉間に皺よってんだ、おまえ」

そんなもの、本人が一番分かっていない。



・今日飲み会だから、

案外と早く片付いたらしい、祝宴だと言って出て行った男から今日中に帰れるか分からないという旨の電話が来た。
雲雀はそれを、何となく面白くない気分で受ける。まさに宴の最中なのか、ざわざわと知らない声が聞こえてくるのも気に食わない。
苛々とした気分を抱え、雲雀は居もしない男の定位置となっていたソファを睨みつけた。

「………そう。だったらそのままそっちに戻れば。元々そういう契約だったろ」
『え?いやでも荷物とかまだ、』
「着払いで送る」

それだけ告げて電話を切る。夕食も風呂も、着替えてベッドに潜り込むのすら億劫になった雲雀は、スーツの上着だけを脱いでソファに身を横たえた。
僅かの間に染み付いたらしい男の香りは、雲雀をますます釈然としない気持ちにさせたのだけれど。




続きを読む >>



(C) 2020 ブログ JUGEM Some Rights Reserved. 
designed by ホームページ制作 Tip3's │無料WEB素材 --Design-Warehouse--